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極端紫外光研究施設(UVSOR) 分子研リポート2004 | 分子科学研究所

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将来計画及び運営方針 309

5-3 極端紫外光研究施設(UV S O R )

5-3-1 現状

2003年に光源加速器及びビームラインを高度化し UV S OR -II へと生まれ変わったが,その後も,従来どおり順調に 運転を継続している。現在,運転時間は9時から21時までの12時間,入射間隔は6時間,蓄積電流値は多バンチ蓄積 モードで 350 mA ,単バンチ蓄積モードで 100 mAである。エミッタンスは,今のところ,高度化前の約1/3に相当 する 60 nm-rad であるが,2005年5月からは新しい高周波加速空胴を使って更に小さい 27 nm-rad でのユーザー運転が 開始される。高度化後は国内各地からの利用者に加えて,分子研独自の国際共同研究プログラムにより,フランス,ド イツ,韓国などの研究者の共同利用が活発に行われるようになってきた。

最新鋭のシンクロトロン放射施設は第3世代と呼ばれている光源加速器を擁しており,第1世代(高エネルギー物 理のためのシンクロトロン加速器を放射光源としても併用)を専用化した第2世代(放射光源専用電子蓄積型シンク ロトロン加速器)の光源加速器では使っていなかった直線部分にアンジュレータなどの挿入光源を挿入し,高輝度な 光源に増強したものである。第2世代光源から見て,直線部が長くなり,その数も増えたものが第3世代光源である。 20年以上前に建設した UV S OR 光源は典型的な第2世代光源であったが,2003年以降,高度化によって生まれ変わっ

た UV S OR -II 光源加速器では,直線部は4箇所から8箇所に倍増し,その長さも 3 m(4箇所)から 4 m(4箇所),1.5 m

(4箇所)となった。偏向電磁石からの放射光の輝度(brilliance)も1桁以上増えた。アンジュレータから得られる放 射光の輝度も世界で典型的な第3世代光源のアンジュレータから得られる輝度の領域に入ってきた。

同種のビームラインは出来る限り1本に絞って高度化することで各ビームラインでの研究レベルも向上しつつある。 特に2004年4月に実施した赤外線ビームライン B L 6B の高度化は成果を上げている。B L 6B では偏向電磁石ダクトにミ ラー槽を直結し,いわゆるマジックミラーをその内部に設置することで,改造前の約4倍の 215 × 80 mrad2という非 常に大きな取込角を実現した。その結果,輝度は2桁程度も向上した。平成17年度にこの明るい光源を使って,テラ ヘルツ領域の顕微分光を中心に赤外磁気光学や表面反射吸収分光等に利用するための準備を行っている。また,高度 化の際に設置された真空封止型アンジュレータ2号機の光を利用する B L 3U においては,高輝度高分解能軟X線分光 器が立ち上がり,分子クラスターのような希薄試料の光電子分光実験が始まっている。さらにこれまで高分解能化が 待たれていた軟X線発光二次分光器の開発に全く新しい光学系を組むことで世界に先駆けて成功している。

5-3-2 将来計画

平成16年度に外部評価を受け,将来計画についても議論した。その後,平成17年1月26日の分子科学研究所将来計 画委員会,2月4日の UV S OR 運営委員会においても検討を加えた。施設の次期計画を練って概算要求するのは10年 程度先になるものと考えられ,それまでは高度化後の光源とビームラインの強化,あるいは次世代化(最後の註を参 照),が中心となる。すでに高度化されたビームライン(特に B L 3U と B L 6B )についても一層の強化を行う。外部評 価結果(非公開も含む)や UV S OR 運営委員会での議論を踏まえて,研究系ビームラインを含めたビームラインの見直 しや光源開発研究や高度な利用研究に関する国内他施設との連携を進めつつ,施設全体の次世代化に取り組む。

①光源加速器の次世代化(トップアップ運転)

世界共通理解としては汎用型のシンクロトロン放射光源は第3世代までしか定義されていないが,第3世代光源と 呼ばれる光源が誕生してから10年以上経っており,現在までに既存の第3世代光源においていろいろな面からその性

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310 将来計画及び運営方針

能向上が行われてきた。ここではそれらの性能向上計画を次世代化と呼ぶことにする。第3世代化されたと言っても よいレベルとなった UV S OR -II 光源の次の計画はトップアップ運転である。トップアップ運転とは電子ビーム入射後, 時間と共に弱くなってくる放射光の寿命を実質的に無限大とするもので,利用者は絶えず同じ強度のシンクロトロン 放射が使えるために研究の効率が上がるのはもちろん,測定条件が全く変動しないためデータの質が格段に向上し,研 究の質も変わってくる。トップアップ運転は次世代のシンクロトロン放射光源の必要要素である。トップアップ運転 を実現するには以下のことをしなければならない。

・フルエネルギー入射の実現

現在,入射器で 600 MeVまで加速器した電子を UV S OR -II 電子蓄積リングに打ち込んだ後,750 MeVに加速している が,入射器で 750 MeVまで加速できるように電源等を強化する。

・放射線防護壁の増強

トップアップ運転では,寿命で失われた電子蓄積リング内の電子を補給するため,絶えず入射器から電子を入射する ことになり,入射中も実験可能な放射線レベルに押さえる必要がある。そのため,電子蓄積リングの放射線防護を現 状より強化する必要がある。

平成17年度末から平成18年度初めにかけて入射器と放射線防護壁の増強を実施する予定である。その後,トップアッ プ運転を可能としていく。

②挿入光源ビームラインの強化

高度化後,長直線部が4箇所,短直線部が4箇所となったが,現状では長直線3箇所がアンジュレータに使われて いるだけである。また,アンジュレータの3本の内,1本は短いもので,本来は短直線部に挿入すべきものである。そ のため,新たな長尺アンジュレータを長直線部に導入し,ビームラインを新設するため,平成17年度末から平成18年 度初めにかけて以下のことを予定している。

・既存アンジュレータのギャップと分光器の波長駆動の同期スキャンの実現

・現在の短尺アンジュレータ(B L 7U)を短直線部(B L 6U)に移動させ,新たな利用研究を検討

・B L 7U に長尺アンジュレータを導入し,真空紫外分光器を新たに建設

以上によって,直線部のアンジュレータは以下のようになる。

B L 1U(長) 入射点 (短尺挿入光源併設可能) B L 2U(短) 加速器制御系(主高周波加速空胴) B L 3U(長) 長尺アンジュレータ

B L 4U(短) 短尺アンジュレータ用(検討中)

B L 5U(長) 長尺アンジュレータ(自由電子レーザーにも併用) B L 6U(短) 短尺アンジュレータ

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将来計画及び運営方針 311 B L 7U(長) 長尺アンジュレータ

B L 8U(短) 加速器制御系

新しく建設するビームラインは他施設との差別化も考え UV S OR が最も得意とする真空紫外(極端紫外)領域の高分 解能分光(特に光電子分光)を実現させるもので,今年度の外部評価で最優先での建設を勧告されているものである。 これまで UV S OR 施設ではこの領域で性能的に他に誇れるような分光器建設に成功していないとの評価を受けており, 国内の研究者・研究機関との連携も視野に入れて建設する必要がある。今後,3月10日,11日の UV S OR 高度化ワー クショップで国内の専門家と詳細を検討し,その結果を踏まえて,計画をより確実なものにする。

③光源加速器の次世代化(光源開発研究と利用研究)

光源開発研究では,テラヘルツ領域において単バンチ大電流蓄積時にバースト的な大強度コヒーレント放射光の観 測に成功し,さらにUV S OR でしか実現できないユニークな手法でバーストの発生を制御することに世界で初めて成功 した。そのピーク強度は通常放射光の 1000 倍から 10000 倍にも達するものである。すでに B L 6B では広い波長領域に わたって非常に安定で非常に強いテラヘルツ光を提供しており,干渉性を除けばレーザー光源を使うよりもすぐれた 光源であるが,コヒーレント放射光の利用が実現すれば,テラヘルツ領域の放射光やレーザー光をはるかに凌駕する 光源となる。UV S OR では所外の加速器研究者とも連携して,平成17年度にはフェムト秒レーザーを利用することでよ り制御されたテラヘルツ光の発振に取り組み,平成18年度あるいは平成19年度には利用研究を実現させる。また,中 期的にはフェムト秒放射光パルスの発生とその利用研究にも取り組む。

また,B L 5U を使った自由電子レーザーでは,現在,予備的な実験の段階であるが,波長 245 nm において数 100 mW の出力を得ている。平成17年度,平成18年度の2年間,海外の電子蓄積リング自由電子レーザー研究者と国際連携し ながら,低エミッタンス電子ビームを用いた紫外域における大強度発振の実現に取り組み,利用研究の可能性を探る。 平成17年度末に高分解能光電子分光装置を B L 7U(新設真空紫外ビームライン)に移設した場合,18年度には B L 5U の 自由電子レーザー専用化が可能である。いずれにしても外部評価の指摘に従い,2年後には自由電子レーザー研究の 見直しを行い,平成19年度以降も B L 5U の将来計画として自由電子レーザー研究(利用研究を含む)を継続するか,他 の計画を優先させるか,等について審議する。

(註)

放射光という学術用語は synchrotron radiation (S R )のことであり,シンクロトロン放射と直訳もされている(中国語 では同歩輻射)。最近では混乱を避けてシンクロトロン光と呼ぶところもある。なお,軌道放射(synchrotron orbi tal radiation, S OR )という表現は東京大学物性研究所の光源施設(今はない)の固有名詞から来ていると国際的には認知 されており,学術的には全く通じない用語である。放射光源は第1世代から始まって第3世代まですべてシンクロト ロン加速器を基本とする光源であり,今のところ,第4世代と呼ばれるシンクロトロン放射光源の具体案はなく,汎 用型の放射光源の分類としては第3世代で止まっている。その中でもトップアップ運転などの第3世代光源の高度化・ 次世代化が現在,各光源で試みられている。一方,現在,国内で次世代放射光源と呼ばれているものは線形加速器(ラ イナック)を使った光源のことである。しかし,線形の光源加速器を放射光源と呼ぶのは,もともと放射光がsynchrotron radiation であったことを考えると矛盾した呼び方である。欧米ではもちろん,線形の光源加速器のことは synchrotron radiation とは一切,呼ばない。いつの間にか国内では放射光とはシンクロトロン放射のことではなく,加速器から得ら

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312 将来計画及び運営方針

れる光のことを指すようになったようである。この次世代放射光源の意味する線形加速器光源は汎用的なものではな く,第3世代放射光源の延長にもない。つまり,今のところ,次世代放射光源と呼ばれている次世代光源は,汎用型 の放射光源の次世代化とは全く異質なものであり,UV S OR -II のような第3世代(的)放射光源の存在価値を失わせる ものではないことに注意が必要である。

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